2017年8月20日 花芽と抽苔(とう立)
最近農家っぽくない話ばかりだったので、今日は花芽と抽苔(とう立)についての
ちょっと、マニアックな話です
3月のマルシェに出店していたおり、おとなりの農家さんから質問が
「なんか植えた時期が悪かったのかな?小さいのに葉物に花が咲いちゃって。どうしてだろ?」
「いつ植えました?」
「2月の上旬に、黒マルチとビニールをかけて種まきました」
「で、品種は?」
「青梗菜や小松菜などのアブラナ科類とほうれん草」
「早めの収穫を狙ったと思いますが、残念でしたね。ただ、それらはとう立した蕾の状態で
食べられるので、出荷されたらいかがですか?」
となぐさめても、納得いかない様子で、さらに質問は続き、
「マルチで地面も温めたし、ビニールもかけて保温もしたんだけど、それでもだめ?
早すぎッてこと?」
「はい、保温は完璧。ただただ時期が悪かったですね」
僕らが食べてる野菜は、花が咲いてほしいもの(トマトやキュウリの果菜類等)、
花が咲いてほしくないもの(葉物類等)にわかれます。
植物は、花を咲かせ子孫(種)を作って、命をつなぎます。歌にもありますよね
「季節ごとに咲く一輪の花に 無限の命」ていうやつです
それらの成長には、自分の体を大きくする栄養成長と、子孫(種)を残す生殖成長の、
2つの生育段階があります。
ちょっとわかりにくいかもですが、
植物が栄養成長から生殖成長へ移行する初期段階として、茎頂部で
それまで葉や茎を分化していた部分が、花に分化する現象を花芽分化
本来、短い茎が、花芽分化に伴って急速に伸長する現象を抽苔(とうが立つ)
といいます。
今回の農家さんの場合、彼の想定以上に花芽分化が早くおこってしまい、
とう立してしまったというわけです。
とう立すれば植物は、子孫を残す(赤ちゃんを産む)ことができる体になり、一気に
開花、受粉、実、種という生殖成長に突入します。
言い換えれば、葉物野菜は、子孫を残す体ができる前の、もっとも食べられたくないときに
収穫され、人間を含めた動物の食べ物になっているわけです。
ここに「いただきます」の意味がこめられているともいえます。
その植物がもつ、無限の命を絶ち切って、いただいてしまうわけですから。
感謝以外のなにものでもないわけです。
手を合わせ、「いただきます」は、お命全部ありがたく、いただきますであり
手を合わせ、「ご馳走様でした」で、料理を作ってくれた人、材料を作っててくれた人、
届けてくれた人に感謝するということじゃないでしょうか。
話をもどし、花芽やとう立がどうやってSWITCHが入るかを説明すると、
1:種まきをした時から、低温に一定期間遭遇することで、花芽が形成されてとう立ちする作物
2:高温や長日条件(※1 長日植物)により、花芽が形成されてとう立ちする作物
3:温度条件や日長条件に関わりなく、ある一定の大きさに成長したら、花芽が形成される作物
に分かれます。例をあげると、
1:キャベツ、ゴボウ、タマネギ、ニンジン、ネギ、ブロッコリー、大根、白菜、小松菜.
2:シュンギク、ホウレンソウ、ラディッシュ、レタス、ほうれん草
3:トウガラシ、トマト、ナス、ピーマン(果菜類系)
1の状況でのとう立を避けるためには、
冬場にあまり大きくならないように播種する時期を調整します。(大きくしないで冬を迎える)
あまりに、早く植えすぎないようにするわけです。
2の状況でのとう立を避けるためには、
播種する時期を調整し、場合によっては、とう立ちの遅い晩抽性品種など、
適した品種を選びます。
3の場合は、人間でいえば、赤ちゃんを作りながら自分も成長を続けるわけですから
とう立の問題はおこりません。やや、果樹に似ていますね。
この農家さんの場合は、
ほうれん草は、2に属すので、
寒い時期の種まきの為、初期の成長がすごく遅く、小さいままに3月の春分の日
を迎え、次節は長日(昼が12時間以上)に移り、花芽分化とう立と至ったと思われます。
品種も、東洋品種は短い日長に敏感に反応して既に分化した花芽の生長がおこり抽苔します。
西洋系品種の場合は東洋系品種より長い日長と高めの温度にならないと感応して
抽苔してこないわけです。農家さんの品種は、たぶん東洋系だったと推測されます。
対策は、西洋系の品種にして、もう少し暖かくなってからまくか、東洋系なら年内に種まきし、
ゆっくり成長させて3月取りをめざすということ
小松菜系は、1に属し、種子春化型といい、種まき温度が0~5℃で花芽分化がはじまり、
キャベツブロッコリーは緑植物春化型といい芽がでてから5~10℃にあたると
花芽分化がはじまります
今回の小松菜類は、種まき時の温度が低すぎて芽吹きから本場4-5枚で
とう立が始まっちゃったわけです
対策は、もう少し、暖かくなるまで待つか、5度以上ある年内にまくべきだったということです。
こう書いてくると、おわかりかと思いますが、野菜の種まきの時期には明確な理由があります
遅くてもいけないし、早くてもいけないのです。
なぜ、暑い夏に人参やブロッコリーの種をまくのか、玉ねぎや、ソラマメはなぜ越冬させるのか
植物は、人間以上にしっかり体内時間を持っています。
動物のように涼しいとこに移動したり、
合コンで彼女を探したり(経験から言えば、人間でも探せないww)できない分、
植物は、夏の暑さや冬の寒さに耐える方法を身に着け、
いい匂いや綺麗な色で虫をひきつけ受粉させ、寒い冬を種で過ごしたり、
暑い夏を種ですごすために正確に季節を把握して、
JUST IN TIMEで短い生涯を終えて、次につないでいるのです。
夜の長さを正確に計測し、これから暑くなるのか寒くなっていくのかを知ります。
例えば、紫蘇は夜が9時間45分より長くなると花芽分化がはじまります。
植物は動けない分、とんでもない優秀な体内時計をもって確実に適切な時期に種を作って
次に繋ぐわけです。
どうです?植物達けっこうやるでしょ?
農家さんわかってくれたかな~
※1
短日植物は、 日照時間が短くなると花が咲く植物
長日植物は、 日照時間が長くなると花が咲く植物
ちょっと、マニアックな話です
3月のマルシェに出店していたおり、おとなりの農家さんから質問が
「なんか植えた時期が悪かったのかな?小さいのに葉物に花が咲いちゃって。どうしてだろ?」
「いつ植えました?」
「2月の上旬に、黒マルチとビニールをかけて種まきました」
「で、品種は?」
「青梗菜や小松菜などのアブラナ科類とほうれん草」
「早めの収穫を狙ったと思いますが、残念でしたね。ただ、それらはとう立した蕾の状態で
食べられるので、出荷されたらいかがですか?」
となぐさめても、納得いかない様子で、さらに質問は続き、
「マルチで地面も温めたし、ビニールもかけて保温もしたんだけど、それでもだめ?
早すぎッてこと?」
「はい、保温は完璧。ただただ時期が悪かったですね」
僕らが食べてる野菜は、花が咲いてほしいもの(トマトやキュウリの果菜類等)、
花が咲いてほしくないもの(葉物類等)にわかれます。
植物は、花を咲かせ子孫(種)を作って、命をつなぎます。歌にもありますよね
「季節ごとに咲く一輪の花に 無限の命」ていうやつです
それらの成長には、自分の体を大きくする栄養成長と、子孫(種)を残す生殖成長の、
2つの生育段階があります。
ちょっとわかりにくいかもですが、
植物が栄養成長から生殖成長へ移行する初期段階として、茎頂部で
それまで葉や茎を分化していた部分が、花に分化する現象を花芽分化
本来、短い茎が、花芽分化に伴って急速に伸長する現象を抽苔(とうが立つ)
といいます。
今回の農家さんの場合、彼の想定以上に花芽分化が早くおこってしまい、
とう立してしまったというわけです。
とう立すれば植物は、子孫を残す(赤ちゃんを産む)ことができる体になり、一気に
開花、受粉、実、種という生殖成長に突入します。
言い換えれば、葉物野菜は、子孫を残す体ができる前の、もっとも食べられたくないときに
収穫され、人間を含めた動物の食べ物になっているわけです。
ここに「いただきます」の意味がこめられているともいえます。
その植物がもつ、無限の命を絶ち切って、いただいてしまうわけですから。
感謝以外のなにものでもないわけです。
手を合わせ、「いただきます」は、お命全部ありがたく、いただきますであり
手を合わせ、「ご馳走様でした」で、料理を作ってくれた人、材料を作っててくれた人、
届けてくれた人に感謝するということじゃないでしょうか。
話をもどし、花芽やとう立がどうやってSWITCHが入るかを説明すると、
1:種まきをした時から、低温に一定期間遭遇することで、花芽が形成されてとう立ちする作物
2:高温や長日条件(※1 長日植物)により、花芽が形成されてとう立ちする作物
3:温度条件や日長条件に関わりなく、ある一定の大きさに成長したら、花芽が形成される作物
に分かれます。例をあげると、
1:キャベツ、ゴボウ、タマネギ、ニンジン、ネギ、ブロッコリー、大根、白菜、小松菜.
2:シュンギク、ホウレンソウ、ラディッシュ、レタス、ほうれん草
3:トウガラシ、トマト、ナス、ピーマン(果菜類系)
1の状況でのとう立を避けるためには、
冬場にあまり大きくならないように播種する時期を調整します。(大きくしないで冬を迎える)
あまりに、早く植えすぎないようにするわけです。
2の状況でのとう立を避けるためには、
播種する時期を調整し、場合によっては、とう立ちの遅い晩抽性品種など、
適した品種を選びます。
3の場合は、人間でいえば、赤ちゃんを作りながら自分も成長を続けるわけですから
とう立の問題はおこりません。やや、果樹に似ていますね。
この農家さんの場合は、
ほうれん草は、2に属すので、
寒い時期の種まきの為、初期の成長がすごく遅く、小さいままに3月の春分の日
を迎え、次節は長日(昼が12時間以上)に移り、花芽分化とう立と至ったと思われます。
品種も、東洋品種は短い日長に敏感に反応して既に分化した花芽の生長がおこり抽苔します。
西洋系品種の場合は東洋系品種より長い日長と高めの温度にならないと感応して
抽苔してこないわけです。農家さんの品種は、たぶん東洋系だったと推測されます。
対策は、西洋系の品種にして、もう少し暖かくなってからまくか、東洋系なら年内に種まきし、
ゆっくり成長させて3月取りをめざすということ
小松菜系は、1に属し、種子春化型といい、種まき温度が0~5℃で花芽分化がはじまり、
キャベツブロッコリーは緑植物春化型といい芽がでてから5~10℃にあたると
花芽分化がはじまります
今回の小松菜類は、種まき時の温度が低すぎて芽吹きから本場4-5枚で
とう立が始まっちゃったわけです
対策は、もう少し、暖かくなるまで待つか、5度以上ある年内にまくべきだったということです。
こう書いてくると、おわかりかと思いますが、野菜の種まきの時期には明確な理由があります
遅くてもいけないし、早くてもいけないのです。
なぜ、暑い夏に人参やブロッコリーの種をまくのか、玉ねぎや、ソラマメはなぜ越冬させるのか
植物は、人間以上にしっかり体内時間を持っています。
動物のように涼しいとこに移動したり、
合コンで彼女を探したり(経験から言えば、人間でも探せないww)できない分、
植物は、夏の暑さや冬の寒さに耐える方法を身に着け、
いい匂いや綺麗な色で虫をひきつけ受粉させ、寒い冬を種で過ごしたり、
暑い夏を種ですごすために正確に季節を把握して、
JUST IN TIMEで短い生涯を終えて、次につないでいるのです。
夜の長さを正確に計測し、これから暑くなるのか寒くなっていくのかを知ります。
例えば、紫蘇は夜が9時間45分より長くなると花芽分化がはじまります。
植物は動けない分、とんでもない優秀な体内時計をもって確実に適切な時期に種を作って
次に繋ぐわけです。
どうです?植物達けっこうやるでしょ?
農家さんわかってくれたかな~
※1
短日植物は、 日照時間が短くなると花が咲く植物
長日植物は、 日照時間が長くなると花が咲く植物
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